次世代ITを活用した未来型教育研究開発事業(学校インターネット3)最終報告書
『自作Web教材』と『次世代ITの活用』で、生徒も教師もスキル向上
文化女子大学附属杉並中学校・高等学校
報告者:津久井 大
http://www.bunsugi.ed.jp/
1.学校紹介
所在地 :
東京都杉並区阿佐谷南3-48-16
生徒数
:
中学校163名・高等学校666名
教員数
:
55名
学級数
:
中学校6クラス(各学年2クラス編成)・高校21クラス(各学年7クラス編成)
本校は校名の通り文化女子大学の附属高校で女子校である。文化女子大学及び短期大学に約30%が進学し、他大学および他短期大学に約50%、他専門学校に約10%が進学する。
現役で約90%の生徒が進学するということが本校の特徴のひとつとなっている。
医療看護系、情報系などの理科系大学や短期大学等に進学する生徒もいるが、どちらかというと文科系大学へ進学する生徒が多い。
本校における『情報』の授業の特徴は何といっても『情報教育遠隔講座』と称して、授業内容を全てWeb化し、公開していることである。
『いつでも』『誰でも』『どこででも』学習できることが、本校の情報の授業のキャッチフレーズとなっている。
1年間で行う課題も課題一覧のページを作成して各課題の説明ページには課題毎に必要なスキルが一覧されている。
自分が理解できていないスキルに関してはリンクを辿ることにより自ら学習できるようにもなっている。
生徒は授業だけではなく、学内に存在するフロアパソコン(フリースぺースのパソコン)を使って放課後等に自学自習もできるし、自宅からも同じ授業内容を主体的に学習することができる。
2.研究のねらい
導入された情報機器やソフトウェアなどの次世代ITを活用して、どのようにすれば『より分かりやすい授業』を展開できるかを模索する。キーマンとなる教員の養成とそのサポート、そして並行して生徒自らが自分の意志で活動できるような体制作りを目指す。
3.研究の経緯
1年次:
学校インターネット3研究指定校に認可され、1年次の活動は主にインフラの整備に充てられた。平成13年4月17日の第1回説明会~平成13年9月20日の第3回説明会までの各説明会への参加、並びに学内に設置導入される情報機器に関する工事の立ち会いなどが主要な仕事となった。
設置工事は平成13年12月をもって完了したので、翌年1月~3月は導入された機器の使用方法を担当者が理解する期間に充てた。 上記の具体的な内容はは
http://www.bunsugi.ed.jp/next_it3/itdevel1.htm
にまとめて、既に報告済みである。詳細はこのページを参照して頂きたい。
2年次:
当初の予定では簡単な動画データを作成し、それを用いてまとめた独自教材を作成することを目標としてきた。また、『映像データ』の公開なども試みた。
情報の授業で用いる独自教材は、静止画像(アプリケーションソフトのスクリーンショット)を中心としたものを別途作成していた(『情報教育遠隔講座』というWebテキスト)が、これは生徒のための授業だけではなく、教員対象の校内研修にも活用し成果を収めた。
2年目となって実際の研究に入るにあたり、『次世代IT』を強く意識した教材を作成するよりも、今、私にできることを中心に他の教職員にも知識・技能の向上をしてもらった方が生徒への還元が早いと考えた。このように途中より方針を変更し、『通常の授業内容の厚みを少しでも増すような方向にITを活用』することを模索することとした。
3年次:2年次の流れを踏襲し、一般の教員がITを活用するようになるためのサポートを引き続き行っている。
成果は本校の該当ページと
NICERのページから順次、追加発表していく。
4.研究の内容
情報科の教員を中心としつつも他教科の教員による利用も活発になるように日々啓蒙活動に励んだ。
『校内教員研修の充実』、『教員が使用する個人専用のノートPCを徐々に増やしていく(平成15年度中に1人1台体制を確立する予定)』、(情報の授業においても説明は十分に行っているが)『自作Webテキストによる自学自習(教員及び生徒)』により、教員のスキルが向上し、同時に生徒の情報スキルも向上する。
成果物(Webテキスト)のURL http://www.bunsugi.ed.jp/kyoka/jyoho/text/usage1.htm
5.研究の評価・課題
導入された機器のうち、よく活用した機器はパソコン本体・プリンタ・スキャナは勿論のこととして、マルチメディアボード(電子ホワイトボード)、ディジタルビデオカメラ、ディジタルカメラ、ビジュアルプレゼンターというところである。
教員のやる気は十分にあるし、特別なことはできなかったかもしれないが、与えられた機器やソフトウェアを活用して多くの成果を報告できたと自負している。
また、多くの情報機器やソフトウェアを活用できたことに大変感謝している。
ただひとつ、残念に思ったことはテレビ会議システムに関して『長崎修学旅行関連』でのテレビ会議を企画し、相手校募集の掲示板に書き込みしたものの交流校は見つからなかったということである。
別の学校の先生方数名によるそれぞれ交流校募集の書き込みがあったが、この掲示板の利用者はほとんどいないようで、反応はないようであったのが寂しくもあり、残念なところであった。
そのために企画内容を『メールによる交流』に変更した。
長崎市の観光課の方にも協力して頂き、長崎市内の私立学校である『純心中学校』を紹介され現在もメール交流が続いている。
利用しているメール機能(Webメール)は学校インターネット3で導入された『GraceMail』とまったく同じものである。但し、授業で主に使っている回線は既存回線なので、既に学校で導入していた『GraceMail』を利用した。
本校では既に常時接続の環境があり、今回の学校インターネット3の回線と併用することを考えていた。しかし、セキュリティの問題、その他いろいろなことが関係して、結局、併用はできず、当然のことと理解しつつも残念ながら別ネットワークとなってしまった。
その関係で既存のネットワークで既に図書館の蔵書管理システムや生徒用の共有フォルダ、共有プリンタ、全教員や生徒全員に配付したメールアカウントなどを利用していたので、3年間という期間が決まっている実験的な回線には乗り換えることができなかった。
従って、学校インターネット3の回線は限られた範囲の中での利用しかできず、普段の授業では既存の回線を使わざるを得なかった。
もし同様の研究事業が今後も行われる場合には、何らかの方法を考えて頂きたいと思う。
このようなことを本報告書に報告する学校がどのくらいあるかは不明であるが同様に思った学校は多いことと思われる。
6.研究成果の内容と普及方法
<<高校・英語の授業での利用>>
教科書のマザーテレサの内容と関連して、今回はワープロで独自教材を作成して提示したり、関連するWebページを提示しながら授業を展開した。音声による資料も流した。
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左の写真は、この授業実践を行った特別教室(読書自習室:図書室)の様子である。右側の写真は電子ホワイトボートを活用する英語科教員である。
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<<中学国語科・『表現学習』での電子ホワイトボードの活用例>>
中学校の国語科では『表現学習』と銘打ち、自分の興味のあることを一つ選び、それに関する調べ学習をして得たことをプレゼンテーションソフトを用いて1分間のプレゼンテーションを行う授業を毎年行っている。
左の写真はその発表会のトップバッター(先頭の演者)に指導している国語科教員と発表会場(読書自習室:図書室)の様子である。
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左の生徒写真では身振り手振りをしながら上手く発表ができた例の一つである。
右の写真では、「棒読みの発表をした生徒もいたけれども、本当は『身振り手振り』や『ポインティング動作』も重要だな」と担当の国語科教員が最後に締めくくった。 |
<<高校・情報科でのプレゼンテーション実習(情報の発信)>>
情報科のプレゼンテーション実習の様子である。
中学1年生対象の国語科『表現学習』ではひとり1分間プレゼンテーションが課題であったが、情報科ではひとり3分間でプレゼンテーションをさせている。
左の写真は旧課程『選択情報』を選択した生徒対象の授業で行ったプレゼンテーション実習である(課題は特に指定せず自由課題とした)。
新課程の情報は本校では『情報A』を行っているが、高校1年生対象の『情報A』のプレゼンテーション実習(情報の発信)では『情報が社会に及ぼす影響』の部分と引っかけて、『自動改札システム』、『POSシステム』、『SUICA』、『図書館蔵書管理システム』、『テクノストレス』、『テクノ不安症』、『テクノ依存症』、『ハイテク犯罪』、『出会い系サイト』といったような課題を設定している。
これらの実践事例は現代教育新聞2003-06-10号にも紹介された。
該当ページhttp://www.gks.co.jp/y_2001/pc/densiboard/03061701.html
<<中学校・『特別活動~修学旅行の準備~』及び『修学旅行当日』の様子>>
左の写真は今年度(平成15年度)の中学校長崎修学旅行のしおりを作成しているところである。 すべての内容を生徒達自身の手で完成させた。
指導しているのは(情報科ではない)家庭科の教員である。
尚、前述のように修学旅行関連で、長崎市内の『純心中学校』とメール交流を行った(特別活動と情報の授業を利用)。
本校では修学旅行の活動状況をインターネットを用いてほぼリアルタイムにWeb上に公開している。
通常教員がノートPCを旅行先に持参し、取りためた写真画像をメールにて本校に送り、それを用いて『修学旅行のページ』を作成、Web上に公開している。
今年はそれを生徒自らに行わせてみた。前日に『ディジタルカメラをノートPCに接続して画像データを取り出すまでの作業』を情報科の教員が指導した(右の写真)。
この写真は修学旅行中にホテルの客室からディジタルカメラの画像を送っている生徒の様子である。
ディジタルカメラで撮影された画像データをノートパソコンのハードディスク上に落とし、1枚1枚リサイズし、必要なもののみを圧縮して、学校のメールアドレスに送信した。
受信した画像データとコメントを元にして『文化女子大学附属杉並 中学校長崎修学旅行2003』というページを作成、公開した(詳細は
http://www.bunsugi.ed.jp/nagasaki2003/naga_top.htm
を参照)。
ここに報告したように、情報科以外でも英語科・国語科・家庭科・(数学科)など授業で普通に使える教員が増えてきた。
また、『特別活動』の時間や『総合的な学習の時間』などにおいても活発に利用されるようになってきた。
学内において情報機器を利用した授業実践を普及させるためには、『ビジョンを考える(核となる)教員の存在』、『実働部隊としてキーマンとなる教員の養成』並びに『キーマンたちの協力』が必要となるであろう。
6.に記載したように英語科・国語科・家庭科・(数学科)など授業で普通に使える教員が増えてきた。
すべての教員・生徒に既にメールアカウントを配付済みであり、教員・生徒ともに徐々にではあるが違和感なく使えるものが増えつつある。生徒の作品、図書委員会のページなど本報告書では紙面の関係で記載できない内容があるが、これらの部分も以前より充実してきている。
『分かりやすい授業』を行えるように教員側もいろいろと日々研鑽しているが、最終的には生徒一人ひとりの意欲(独学意識:学ぼうとする力)にかかっている。
この報告書を書いている今も、生徒達は放課後自主的にパソコン教室に残って自分の課題(Webページの作成)の完成度を高めようと努力している。
私は別室(パソコン教室前のサーバ室)にいるが、既に授業で全ての説明を受けている生徒達は『自作Webテキスト』を頼りに自分の力で作品を完成させつつある。
本当に頼もしい限りである。
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